高麗人参の土づくりってもっと簡単にできないの?
高麗人参の土づくりは「有機質に富んだ膨軟なふかふかな土」すなわち、「菌根菌が増殖しやすい土」をつくることです。そのためには、スダックスなどの緑肥作物を育て土着のアーバスキュラー菌根菌グロマス属を増殖させることが大切で、2年~3年必要であることを書いてきました。
これが高麗人参栽培のポイントであり高コストになる原因でもあります。
そんなに手間がかかるなら高麗人参の栽培は嫌だ。あるいは、畑もないのでプランターで手軽に土づくりをする方法はないのと思っているあなたに、オススメの方法があります。
菌根菌を増殖するのに手間がかかるなら、菌根菌を買ってこよう。
なんとアーバスキュラー(VA)菌根菌は購入できます
農水省の定める地力増進法という法律があります。この中で土壌改良資材の種類について規定されています。微生物を利用したものとしてはVA菌根菌のみが認められています。
最近、無農薬作物に対する人気が高くなっており、農薬の代わりに微生物を使った自然農法への関心が高まっています。そのため、多種多様な微生物を売りにした資材が出回っています。もちろん中には優れたものもありますが、国の指定を受けた微生物はVA菌根菌のみです。
VA菌根菌は繊細な生き物ですから信頼できるところから入手することが大切です。
そもそもVA菌根菌が製品化された経緯は、共生微生物分野での日本の遅れを懸念して京都大学農学部の小川先生が米国から菌株を持ち帰って来られ、大手企業に分け与え製品化を促されたことによります。その中には、ガス会社、電力会社やガラス会社など農業と関係のない企業が多くあり、小川先生の並々ならぬ熱意が感じられます。
持ち帰られた菌株Glomus、Screlocystis、Acaulospora、Enterophospora、Gigaspora、Scutellosporaの6属のうちGlomus(グロマス属)の製品化を担ったのが出光興産アグリ事業部です。
アーバスキュラー菌根菌グロマス属は出光興産のDrキンコンが確実
高麗人参の共生菌根菌であるグロマス属は、出光興産から「Drキンコン」の商品名で販売されています。価格はなんと¥12,000/kgと高価です。高麗人参の土づくりの簡略化には致し方ありません。
農水省の法律で義務付けられた表示もしっかりされていて安心です。
地力増進法に基づく表示「共生率」を理解する
土壌改良資材は、農水省の定める地力増進法に基づく表示をすることが義務付けられています。この表示がされていないと信頼性はないと考えたほうがいいでしょう。
表示の中で、「共生率」という聞きなれない言葉がでてきます。Drキンコンでは、「10パーセント(メイズ)」と記載されています。メイズとはトウモロコシの英語名です。
共生率は次の通り規定されています。
共生率=〔〔植物根とグリッドラインの交差点数のうちVA菌根菌が共生している点数〕/植物根とグリッドラインの交差点数〕×100
簡単に言うと、根の任意の箇所を観察して、菌根菌が見つかった率を共生率と言います。
つまり、トウモロコシをDrキンコンを使用して育てた場合10%の感染すなわち共生が認められたということです。ただし、高麗人参についても同程度の共生率が得られるかどうかは分かりません。
Drキンコンで苗床をつくり、高麗人参の種を播く
まず、プランターの底に軽石を敷き、赤玉土(小粒)と鹿沼土を4:1の割合で入れて整地します。
高麗人参の種を筋蒔きするための溝を掘ります。深さは4~5cm。その溝にDrキンコンを撒きます。0.5~1cmくらい撒きました。
Drキンコンは菌根菌の胞子をゼオライトに付着させたもので、菌そのものが入っているわけではありません。胞子が発芽して菌糸を伸ばして成長しなければいけません。
その際、栄養である糖分の供給者である宿主植物が必要となります。すなわち胞子が発芽した後すぐそばに高麗人参の根がなければいけません。よって、ポイントとしては根に直接触れるようにDrキンコンを撒くことです。このことは、Drキンコンの袋に使用上の注意として書かれています。
高麗人参の種を播き、周りの土で埋めました。これで高麗人参の根が出ればすぐに菌根菌と接触するはずです。
発芽から1月間の成長具合は?
高麗人参の出芽からまだひと月程度ですが、結果を報告します。
対照区はDrキンコンを撒いていないだけで培養土は同じ構成でです。
残念ながら、両者に際立った差異は見られません。
どちらかというと対照区の方が発育が速いようです。これは出芽が対象区の方が1週間早く始まったことによると思います。その原因がどこにあるのかわかりませんが、播種の時期が違うことが影響したかもしれません。
対照区は12月9日、Drキンコンは年明け2月7日に播種しました。Drキンコンの場合、播種後10日以上かかる作物については発芽後、あるいは移植時に撒布するように注意書きがしてあり、できるだけ播種を遅らせたためです。
この辺りの影響が今後どのように成長具合に出てくるのか、また高麗人参の根にアーバスキュラー菌根菌グロマス属が感染しているのかどうか観察していきたいと思います。
機会を見て皆様に報告していきます。