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ふるさと長白山で高麗人参を守ったマツは二葉ではなく朝鮮五葉松

高麗人参[高麗人参に適した朝陽が差し込む森林]
高麗人参は、なぜ日本に自生しないの?
それはね、日本には高麗人参を守ってくれる朝鮮松がいないからだよ。
ホント?

中国の民話やマツの根元に竹節人参が自生していることから、マツと高麗人参の共生関係を信じて、アカマツとクロマツの根元に高麗人参を植えました。
しかし、そもそも高麗人参が日本に自生しているのかどうか疑問に思い、発見例を調べました。発見例は極めて少なく自生しているとは言えないことが分かりました。

なぜ、日本に自生しないのか。300年以上の栽培歴史があるのに、なぜ日本の山林に野生化しないのでしょうか。今村鞆が「人参史」で言うところの果実を啄み山林に運んでくれる鳥も、要件を満たす山林もあります。なのに自生しない。

日本のマツに共生している外生菌根菌と相性が良くない?

高麗人参のふるさとの長白山のマツは朝鮮五葉

野生種の高麗人参である山参(サンサム)が自生しているのは、朝鮮半島の付け根の長白山(日本名は白頭山)です。この辺りに生えている松は朝鮮松です。

朝鮮松とアカマツやクロマツは異なる亜属

朝鮮松の学名はPinus koraiensis、和名はチョウセンゴヨウ(朝鮮五葉)。マツ科マツ属。日本人になじみの深いアカマツやクロマツとは亜属単位で異なりStrobus亜属、いわゆるゴヨウマツの仲間に分類されます。チョウセンゴヨウの針葉は名前の通り5葉あり、アカマツやクロマツは2葉です。

高麗人参[朝鮮松の針葉]

葉は濃い緑色で気孔が白く目立ち、遠目には青緑色に見え、鑑賞性もあります。樹高30m以上になり、直径1.5mに達します。樹皮は灰褐色で幼齢時は平滑、成長するにつれて薄く鱗状にはがれます。

原産地は、北東アジアで、朝鮮半島、中国東北部、ロシア沿海州などに分布します。高麗人参の自生地と一致しています。日本の山林でチョウセンゴヨウを見かけることはほとんどありません。


朝鮮松の種子(松の実)は高麗人参とよく似た薬効を持っている

高麗人参[朝鮮松の種子”松の実”]

アカマツやクロマツの種は小さく食用には向きませんが、朝鮮松の種子(松の実)は8mm程度の大きさがあります。東洋西洋問わず料理に用いられています。

松の実には滋養強壮、アンチエイジング、補気養血、美容などの効能・効果があります。中国では高麗人参と同様に古くから不老長寿の薬として愛用されています。

松の実が高麗人参の根と同じような薬効を有しているのは、菌根菌を介して高麗人参から有効成分を得ているのではないかと考えるのは無理があるでしょうか。


マツの種類によって外生菌根菌もいろいろ

今さらで申し訳ありませんが、外生菌根菌というのは早い話キノコのことです。外生菌根菌の本体は菌糸で、繁殖器官である子実体がキノコです。

キツネタケ属、テングタケ属、フウセンタケ属、チチタケ属・ベニタケ属、ヌメリイグチ属・ショウロ属、セイヨウショウロタケ属などがあります。

外生菌根菌キノコは宿主のマツをある程度選びます。これを宿主特異性といいます。相性みたいなものです。アカマツにはマツタケ、クロマツにはショウロ。ショウロは松露と書きます。なんともいい漢字が当てられています。いい感じです。

二葉マツと五葉マツでは亜属が異なりますので、より大きな特異性を示します。

驚いたことに高麗人参栽培の発祥の地、日光植物園に朝鮮松の木があります。これはきっと高麗人参と朝鮮松の共生関係に気付いていた人がいたに違いありません。

思いたったら、即実験だ!

とりあえず、実験開始です。日本には朝鮮松がありません。扱っている園芸店も少ないので、ネットで探して購入しました。高さ2メートル。送料込みで2万円でした。

朝鮮松の菌根菌

高麗人参[朝鮮松の外生菌根菌]

届いた朝鮮松を鉢から出すと、びっしりと菌根菌がはびこっていました。この菌根菌がその種類の外生菌根菌かはわかりませんが、高麗人参と共生してくれることを祈ってます。


朝鮮松に守られて育つ高麗人参1年生と2年生

高麗人参[朝鮮松に守られて育つ高麗人参]

昨年末、朝鮮松の根元に、1年根を植え付け、その周りに種を播きました。写真は今年5月の状況です。結果が出るのは数年後です。


ちょっと待て、朝鮮松もゴヨウマツなら、日本にもゴヨウマツはあります。
日本のゴヨウマツとの相性は?同じゴヨウマツは、同じ菌根菌?
To be continue.