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迷信?それとも真実?高麗人参の栽培が難しい3つの理由!

高麗人参
人類が高麗人参の神秘的な薬効に魅せられたのは2000年前、何とか栽培できないものかと試行錯誤の歳月を経て、本格的な栽培が始まったのが300年前です。

薬効の魅力もさることながら金以上の価値を持つ高麗人参ですから、栽培しようと試みたのは権力者、本草学者だけでなく一攫千金狙いの輩もいたと思われます。

高麗人参の栽培に成功するまでには、多くの難しい課題を克服してきた先人の努力がありました。その中で、伝説とも迷信とも思える諸説様々な高麗人参栽培の物語。それらは単なる迷信?それとも真実?

1.高麗人参は、土地のすべての栄養を吸い取って不毛の地にしてしまう?

高麗人参の栽培はジプシー農法だった

高麗人参を栽培すると、その土地の栄養分をねこそぎ吸い取ってしまうので、地力を回復するために30~50年もの長い間、寝かせ休ませる必要があると言われています。つまり、その畑では一代に一回しか高麗人参の栽培はできないことになります。

そのため、ジプシーのように新たな土地を求めたり開墾したりして、高麗人参の種子をまき育てることになります。実際、福島県会津地方では、平坦地や山沿いの畑地のほとんどは、過去に少なくとも一度は高麗人参の栽培がおこなわれたと言われています。

栄養を吸い取ってしまうのではなく、土壌病原菌による連作障害が原因

近年になり、これは土壌病害や土壌センチュウ等生物的要因による連作障害(忌地ともいう)であることがわかりました。半陰地性植物である高麗人参の栽培は、日覆によって日光を遮るため、より病原菌が繁殖しやすい環境となっていることも影響しています。

土壌の質にもよりますが、病原菌が消滅するには10~15年は必要で、粘土質の土では30年以上かかりるところもあります。栄養をねこそぎ吸い取ってしまうというのは真実ではありませんが、数十年間は高麗人参を栽培することができないのは事実です。

現在は、土壌消毒や別の作物との輪作で、回復期間の短縮が図られていますが、それでも数年は高麗人参を栽培することはできません。

2.高麗人参の土づくりには3年の歳月が必要?

開墾された新たな土地であっても、長年寝かされ地力が回復した土地でも、すぐに高麗人参の種子を播くことはできません。高麗人参を栽培するための土づくりが必要です。高麗人参は途中で肥料を追加することができないので最初の土作りが非常に重要となります。

土壌の徹底的な消毒殺菌

まずは、土壌の徹底的な消毒殺菌です。高麗人参を作付した土地でなくても土の中には様々な病原菌が棲みついています。土を深く耕し天地を返して日光によく当て光と熱で消毒します。ドロクロールやクロールピクリンなどの殺菌剤が併用されることもあります。

収穫までの6年分の栄養を仕込む

次に、土に高麗人参収穫までの5~7年分の栄養を与えます。高麗人参は化学肥料を嫌います。使用すると根腐れを起こしてしまいます。

肥料は主に緑肥を使用します。緑肥とは、ソルゴーやスダックスまたはトウモロコシなどの作物を栽培し、それを土に鋤き込み栄養分とすることをいいます。緑肥作物は、高麗人参生育の7年分の栄養源となるよう大きめに鋤き込みます。

緑肥には、土中の微生物を良く育て、病原菌の繁殖を防いでくれるはたらきがあります。また、緑肥は適度な水はけと保水力をもち、土の水分保湿量を高麗人参の好む50~60%に保ってくれます。高麗人参は過湿を嫌います。

土作りは緑肥作物の種類を変えて、さらにもう1年繰り返します。
実際、土壌消毒に1年、緑肥作りに2年、合計3年をかけて土づくりがされています。これを怠ると高麗人参は十分な生育ができず根腐れなどの病気にかかり、6年後には全滅ということもあるそうです。高麗人参のサポニン量が増える6年根を栽培するには、土づくりに3年かけるというのは本当だった。

3.高麗人参は朝日で育ち、西日が嫌い?

高麗人参は神聖な朝日を浴びて成長し、西日が照り付ける環境では枯れてしまうと言い伝えられています。高麗人参の自生している場所も山の北東斜面で朝日が当たり西日が当たらないところですので、実際の自生場所から推測し、言い伝えられたこと思われます。

高麗人参は冷涼な気温を好む半陰地性植物

高麗人参は多年生植物であるため、活動期は4月から9月頃となります。この時期は日差しが強い季節に当たりますので、半陰地性植物の高麗人参にとっては直射日光は厳しいものとなります。強い日差しが当たると高麗人参の葉は黄化し、同化作用を妨げられて著しく成長が阻害されます。最悪枯れてしまいます。

高麗人参は冷涼な気温を好みますので、午後の温度が高い状態で西日が当たるとストレスも増え成長に悪影響を与えます。また西日により夜間の土の温度が下がらないことも、生育によくありません。光合成の活動が盛んな午前に、爽やかな温度で柔らかな朝日を浴びることが成長を促進します。

高麗人参の栽培に不可欠な日覆は、夏至の日の入り方向

高麗人参

高麗人参の栽培では、日覆が設置されています。むかしは藁が使用されていましたが、会津のように積雪の多い地方では、冬は藁を外し春に取り付け大変な労力を使っていました。現在の日覆は着脱ができる農業用の遮光シートが使われています。遮光シートは、夏至の日の入り方向に張り、南側に30度の傾斜を持たせます。

まさに爽やかな朝日が当たり、夏の強い西日を遮る日覆となっています。福島県会津藩の300年の栽培の歴史から生まれた栽培ノウハウです。

以上3点は事実であり、高麗人参の価格が高い要因は、栽培の難しさからきていると言えます。

これ以外にも、伝説や迷信めいた事柄が出てくればその都度解明していきたいと思います。