外生菌根菌の話はどうなったの?
2016年2月12日の記事「菌根菌ってスゴイ!高麗人参の根分泌物ムシゲルへのお返し」で高麗人参と共生関係にありそうな菌根菌として、アーバスキュラー(VA)菌根菌と外生菌根菌をあげました。
アーバスキュラー菌根菌については、大学や研究機関の解析の結果、主にグロマス属が高麗人参の共生菌であることが判明しました。そしてこの菌根菌は、出光興産から土壌改良資材”Drキンコン”として商品化されており、これを用いて高麗人参の育苗を開始しました。
一方、外生菌根菌を共生菌の候補にあげていました。
なぜ外生菌根菌をあげたかって?
野生種の山参の共生菌に外生菌根菌をあげた3つの理由
宣伝広告で、高麗人参は6年根が有効成分が最も高くなるということが良く謳われています。これは有効成分というより栽培上の事情からきています。
高麗人参は病害虫に非常に弱い植物ですので、6年を超えると根腐れ病にかかる率が高まります。その結果、収穫量が減少したり全滅することもあります。天候などの環境により病気の恐れがあるときは4~5年で収穫することもあります。
野生の高麗人参が100年も生きる理由
栽培の高麗人参の寿命が概ね6年に対し、野生種の高麗人参である山参(サンサム)は100年以上も生存しているものもあります。この違いはどこから来るのでしょうか。共生菌の違いではないかと考えています。
腸内細菌によって人の寿命が左右すると言われます。栄養を吸収する根と腸に共生する微生物、人と植物の差はありますが同じメカニズムです。
高麗人参の菌根菌を調べた論文は、すべて試料に畑で栽培した高麗人参の根を使用しています。野生種の山参の菌根菌を調べた文献は今のところ見つけることはできませんでした。もしご存知の方がおられましたらお知らせ頂ければ幸いです。
菌根菌の働きのひとつに病害虫耐性の増大があります。菌根が形成されている根は、病原菌が感染しにくくなります。山参に共生している菌根菌は、畑栽培で感染するアーバスキュラー菌根菌グロマス属よりもこの働きが非常に強いのではないか。
中国の民話が語る松との関係
中国の民話には高麗人参と松の関係を示すものが見られます。当ブログでも、2つばかり紹介しました。今一度読んでいただければ幸いです。どちらも松の根元に高麗人参が生育していることが書かれています。松と高麗人参は切っても切れない関係にあるようです。
「人類史上最初に高麗人参の薬効を見出した満州族に伝わる民話」
「長白山の高麗人参は昔むかしから朝鮮松に守られて育ってきた」
高麗人参と同じウコギ科の竹節人参も松の根元に自生
日本には高麗人参は自生していませんが、高麗人参と同じウコギ科の竹節人参は、日本各地の山林に多く見られます。
当ブログで見つけた時の状況を報告していますのでご一読いただければ幸いです。
「安達太良山で、高麗人参の仲間の「竹節人参」5本見つけました。」
思いついたら、即!試行だ!
植物相手の実験は、1年サイクルです。工業製品の実験サイクルのように短く出来ません。考えていると時期を逸してしまい、1年待つことになってしまいます。とくに高麗人参の栽培では6年、山参に至っては10年以上観察を続けないと成功したかどうかが確認できません。
私が生きているうちに何回の試行ができるかどうか、また結果を確認できないかもしれません。高麗人参を摂取してできるだけ寿命を延ばして、試行の結果を見届けていきたいと思います。
アカマツとクロマツの苗木と高麗人参1年根を鉢に植え付け
とりあえず、入手の簡単なアカマツ、クロマツをホームセンターで買ってきて鉢に植えました。松には菌根菌がビッシリと付いています。用土は腐葉土を加えた赤玉土です。出来るだけ菌根菌に接触するように高麗人参の1年根を植え付けました。また、種も播いておきました。1年根は赤玉土でプランター栽培したもので、すでに別の菌根菌に感染しているかどうかは不明です。
無事4月半ばに出芽しました。写真は5月上旬の様子です。アカマツの苗木と植えた高麗人参2年生は大きな成長を見せていますが、クロマツではイマイチ。何故だ???
アカマツ林に高麗人参を播種
苗木を植えた鉢の実験の結果を待っておられず、知人の協力を得て、アカマツ林に高麗人参の種を播きました。アカマツ林と言っても落葉広葉樹もあります。
写真は5月のもので新緑に覆われていますが、播種した12月はアカマツの緑が上空にあるのみで枯葉の景色でした。
4月半ばに無事発芽しました。写真は五月半ばの生育状況です。
プランター栽培に比べ茎の徒長もなくいい感じに育っています。
松の根に少しですが外生菌根菌を見つけることができました。
しかし、松くい虫による松枯れはすぐそばまで来ていて、松枯れ対策も進める必要があります。
しかし、なぜ日本に高麗人参が自生していないのでしょうか。日本には300年以上の栽培の歴史があります。鳥が、畑に栽培されている高麗人参の実を食べて、排泄と同時に山林に落とす可能性は大きいと思います。
しかし、野生化した高麗人参を見つけたという話は聞いたことがありません。
なぜでしょう?
To be continue.→