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菌根菌ってスゴイ!高麗人参の根分泌物ムシゲルへのお返し

高麗人参
菌根菌って何ですか? 高麗人参とどのような関係があるのですか?

高麗人参は根からムシゲルを分泌して、有用微生物である菌根菌を引き寄せることが分かりました。

では、菌根菌って一体何者なのでしょう?
どんな種類があって、高麗人参に対してどんな働きをしてくれるのでしょう?

菌根菌について調べてみました。

人間がビフィズス菌や乳酸菌などの腸内細菌と共生し、健康を維持できるのと同様のことが、植物と菌根菌の共生関係でも起きているということです。しかしカスピ海ヨーグルトが合う人もいれば、ブルガリアヨーグルト、あるいは納豆が合う人、人それぞれ共生菌が異なります。高麗人参に合った共生菌探しです。

菌界という世界

この世の生物は動物界、植物界それから菌界に分類されます。界は英語でKingdomといいます。何だかすごい世界という気がします。

しかし、そもそも人間はじめ動物や植物は、細菌(バクテリア)と菌類(カビ)などの菌を起源としています。

細菌は単細胞、菌類は複細胞というべき次の発展段階、ウイルスはタンパク質とDNA(RNA)から構成されていて細菌の前の段階のようなものです。大きさは小さい順にウイルス、細菌、菌類となります。菌界はこの3つに分類されています。

菌根菌は菌類に属しており、分かりやすく言えば、キノコ、カビ、酵母の類となります。

いずれにしても、菌界は無限の種類、数がありまだ十分な解明されておらず、宇宙のような未知の世界です。
ちなみにノーベル賞を受賞された大村先生もこの菌界の方です。

菌根菌の種類

菌根菌には、アーバスキュラー(VA)菌根、外生菌根、内外生菌根、エリコイド根菌、アーブソイド型菌根、モノトロポイド型菌根、ラン型菌根の7種類があります。

高麗人参が好きそうな菌根菌は、アーバスキュラー(VA)菌根と外生菌根です。なんで分かるのかって?最近少しづつ、高麗人参の気持ちが分かるようになってきました。

アーバスキュラー(VA)菌根は好き嫌いは少ない

アーバスキュラー(VA)菌根は、草本や樹木に関わらず、ほとんどの植物と共生しますが、草地および農耕地生態系において主要な菌根として知られています。

根の内部に入り込むので肉眼ではほとんど観察できません。根の細胞を染色して、顕微鏡で観察することで確認ができます。また、胞子嚢胞子を根の外側に形成するので、それでも確認できます。

種類としては、Glomus、Screlocystis、Acaulospora、Enterophospora、Gigaspora、Scutellosporaの6属が知られており、150種ほどが報告されています。

この菌は単独での培養には至っておらず、菌の増殖には宿主植物との共生状態が必須となっています。

外生菌根は相手次第で能力発揮

外生菌根は、主に樹木の根の養分吸収を担っている細根部分に形成されます。マツ科、ブナ科、カバノキ科、フタバガキ科の樹木と共生します。

しかし、その形態は宿主植物種と菌の組合せによって著しく異なっています。フォーク状やサンゴ状になるもの、太く棒状になるもの、色も白、黒、茶と様々です。

これらの菌糸は網目状の組織であるハルティッヒネットを形成するので肉眼で確認できます。また、菌糸の先に子実体(キノコ)が形成されます。マツタケ、ハツタケ、ショウロなどのキノコ類は外生菌根菌です。

外生菌根菌は、主に子嚢菌類、担子菌類に属し、65属5,000種以上が知られています。

もともと森林に自生している高麗人参(山参)の共生菌は、この中にあるかもしれません。

菌根菌のはたらき

リン酸吸収の促進

菌根菌の菌糸は、植物の根よりもはるか遠くまで伸長します。その範囲は根の10倍にも及び、土壌体積では100倍とも言われてます。菌糸からはホスターゼが分泌され、有機リン酸を加水分解しリンを吸収します。リンは核酸の塩基合成に必要で、新しい細胞を作り成長するためには欠かせません。

窒素の利用

外生菌糸から吸収されたアンモニアはグルタミン酸脱水素酵素によって同化され、宿主植物へ供給されます。森林生態系での窒素(もちろんリンも)循環に大きな役割を果たしています。

植物ホルモンの生産

オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン、エチレンなどの生理活性物質を合成し、宿主植物の成長を促進します。高麗人参は成長が非常に遅いので、成長ホルモンの分泌で栽培期間の短縮に繋がればと思います。さらに高麗人参の有効成分を高めてくれることが期待できます。

病害虫耐性の増大

菌根が形成されている根に対しては、病原菌が感染しにくくなります。高麗人参は病原菌に非常に弱いので、菌根菌に期待が高まります。

その他、銅や亜鉛などの微量要素の吸収促進や、重金属耐性の向上、干ばつなどの水ストレスへの耐性を増大する働きをします。

土耕栽培中の1年根を掘り出して、観察しました。

水耕栽培の根には菌根菌が付くはずもないので、土耕栽培中の高麗人参の根を観察してみました。

共生菌を発見。根粒菌?それともVA菌?

高麗人参[写真右;土耕栽培1年根、写真右:〇内拡大(VA菌の胞子嚢胞子らしきもの)]

実態顕微鏡で外観を観察しました。
あれっ、根粒菌?根の先端付近に球状ものが見えます。

根粒菌のように見えます。しかし、根粒菌はマメ科の植物に共生するはずです。土壌は、赤玉土の新品を使用しポット鉢栽培をしたものです。根粒菌が入り込む機会はありません。

ひょっとしてアーバスキュラー(VA)菌根の胞子嚢胞子かもしれません?染色方法を学習し、確認していきます。


松の外生菌根菌

高麗人参[写真左:クロマツの苗に付く菌根菌、写真右;菌根菌の拡大写真]

おまけとして、松の菌根菌の写真も載せておきます。すなわち外生菌根菌です。種類は分かりません。今後の課題です。


菌根菌には、非常に多くの種類があり、その働きも優れていることが分かりました。この中から高麗人参の共生菌を探し出していきます。乞うご期待ください。