高麗人参と共生する菌根菌に興味ありませんか?
おたねくんしか興味ないかな?
えっ、おたねくんも興味ないって。あらま、君の伴侶の話だぜ。
※おたねくん:オタネニンジンの妖精を自認する非公認ゆるキャラ。
会津人参栽培研究会所属、人気上昇中!
高麗人参のアーバスキュラー菌根菌の最初の発見者は日本人だった。
高麗人参が根からムシゲルを分泌して、引き寄せている有用微生物の菌根菌が分かりました。
世の中にはすごい先生がおられるものです。
しかも、その研究者が日本におられました。
九州大学の大賀先生です。そうです、NHKためしてガッテンはじめTV出演も多いのでご存知の方も多いかもしれません。冬虫夏草の人工栽培でも有名な先生でいらっしゃいます。
高麗人参の菌根菌の研究は、韓国忠北大学(清州市)に客員教授としてご在籍中に研究されたものだそうです。今回の試験に使われた高麗人参は、韓国の中西部の忠清道で栽培されたものです。
根圏土壌には、5種類の菌根菌の胞子が見つかった
高麗人参の根の周りにはムシゲル目当てに微生物が集まってきます。微生物の住む根の近傍を「根圏」といいます。この根圏土壌を顕微鏡で観察したところ、3属5種のアーバスキュラー菌根菌の胞子が確認されました。
文献から引用させていただいた写真です。
Glomus mosseae、 Glomus intraradices、Gigaspora margarita、 Acaulospora longular とGigaspora gigantea.です。
数量的には、Glomus属が55%、Acaulospora属が25%、Gigaspora属が少しといったところです。
栽培年数を重ねるほど菌根菌は高麗人参の根にしっかりと入り込む
根圏土壌にいる胞子は菌糸を伸ばし、高麗人参の根に侵入します。これを感染といったり、接種といったりします。菌糸は根の細胞内に樹枝状体(arbuscule)とよばれるものを形成します。また、菌によっては嚢状体(vesicle)を形成するものもあります。
菌根菌の樹枝状体は、土壌から吸収した水分や養分を宿主である高麗人参に与えます。一方、高麗人参は光合成で得た糖などのエネルギーを菌根菌に与えます。嚢状体は、宿主よりもらったエネルギーの余った養分を貯蔵する役目をしています。
細胞内の樹枝状体と嚢状体を顕微鏡で観察した写真です。これも上述の写真同様、文献より引用させていただきました。
写真の左が樹枝状体を撮ったもの、右が嚢状体を撮ったものです。左上の2年根には、アーバスキュラー菌根菌に感染していることがわかります。そして3年根ではかなり感染しています。
4年根では樹枝状体が複雑に入り込み、5年根では樹枝状体に加え嚢状体もはっきりと見ることができます。
つまり、アーバスキュラー菌根菌が高麗人参の根に入り込む程度は、栽培年数が長くなるにしたがって、増加していくことが分かります。
おたねくんも伴侶との関係が、年月を重ねるに従い円熟味を増すということでしょうか。
DNA分析によると、高麗人参は共生相手を毎年変える
1~5年の栽培期間の異なる高麗人参の根について、感染した菌根菌の遺伝子解析がされました。
1年根には、Glomus属が1種のみ見つかり、
2年根は、Glomus属が3種、
3年根は、Glomus属1種とAcaulospora属1種、
4年根からは、Glomus属2種とAcaulospora属1種、そして
5年根からは、Glomus属3種が同定されました。
栽培年数を重ねるにつれ、感染する菌根菌の種類に変化が見られます。
2年目にはGlomus属が3種に増えたかと思うと、3年目には、Glomus属を3種から1種に減らし、Acaulospora属を迎え入れています。
いわゆる3年目の浮気ですね。
そして4年目にはGlomus属を1種増やし、5年目にはさらに1種増やしたかと思うとAcaulospora属を離縁しています。
おたねくんは、齢を重ねるごとに最適な伴侶を求めて、円熟味を増しているようです根。
どんな種類の菌根菌の組合せがいいのか、そして何年目に接種させるるのがいいのか、これらを詰めていくことが、最適な品質の高麗人参を栽培する方法に結びつくような気がします。
いずれにせよ、グロマス属とアコウロスポラ属が主たる菌根菌のようですので、まずはこれら菌根菌を増殖することを考えます。
土壌中にはギガスポラ属の菌根菌も存在しているようですが、根への感染が確認されていないので、上記の2種を中心に考えていきたいと思います。
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※参考文献:J.Fac.Agr.,Kyushu Univ.,52(2), 265-274(2007)
”Identification of Symbiotic Arbuscular Mycorrhizal Fungi in Korean Ginseng Roots by 18S rDNA Sequence” Shoji OHGA et al.