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福島会津御薬園には、三百年にわたる高麗人参栽培のヒントがいっぱい

高麗人参

会津人参をご存知ですか。

高麗人参は、朝鮮人参とか薬用人参とか呼ばれたりしますが、正式な学名はオタネニンジンです。

さらに産地ごとに別の呼び方をすることもあります。日本の高麗人参の三大産地は福島県会津、長野県佐久、島根県大根島ですが、それぞれの産地では会津人参、信州人参、雲州人参と呼んでいます。

この中で、唯一高麗人参の300年にわたる栽培の歴史を保存し、伝えているのが福島県会津。会津若松市にある会津人参発祥の地「御薬園」に行ってきました。

高麗人参はこうやって作るのだ

入場料320円を払って入園するとすぐに薬用植物標本園に当たります。
案内板には次のような説明がありました。

    1670年二代藩主保科正経(ほしなまさつね)は貧しい領民を疫病から救い、病気の治療を施したいとの願いから、園内に薬草園を設け各種の薬草栽培を試みました。
    1684~87年三代藩主松平正容(まさかた)が幕府から人参種子を譲り受け、園内に試植しました。幕府から下付されたので朝鮮人参のことを御種人参(おたねにんじん)と呼ぶようになりました。
    この御種人参を栽培し、広く民間に作付を奨励したことから「御薬園(おやくえん)」と呼ばれるようになりました。
    現在、約400種類の薬草薬木を栽培しています。

高麗人参の栽培には日覆は欠かせない

高麗人参

標本園の最も手前に高麗人参畑があります。残念ながら圃場には何もなく、日覆の柱だけとなっていました。

また、竹節人参(ちくせつにんじん、またはトチバニンジンともいう)も同園内に栽培されていて、高麗人参同様に日覆の柱が立っていました。


高麗人参の栽培には松との共生が望ましい?

高麗人参

興味深いことに、高麗人参の隣には松の木があり、西日を遮っていました。満州族の民話「薬用人参と松」といい、竹節人参の自生場所といい、高麗人参と松の木の共生には確信を持ちました。

☞☞☞満州族に伝わる民話


高麗人参の栽培は病気との戦い、土づくりが重要

園内で薬草の世話をされている70代の男性に話をお伺いしたところ、9月終わりには高麗人参の葉や茎の地上部は枯れてしまうとのことでした。

そして一旦、高麗人参の根を掘り起こし、堆肥を施し埋め戻したとのことです。堆肥は園内の落ち葉を自然発酵させたものを使用し、毎年移植しなおします。これは土壌病原菌による根腐れを防ぐためとのことです。それでも1,2本はダメになるそうです。

松の木と圃場の間に通路がありますが、これが松との共生関係を不十分にし、高麗人参を病気にさせるのかもしれません。
堆肥は、牛糞や鶏糞などは使わず落ち葉のみで、窒素分を抑えることが重要であるとのことでした。

高麗人参の土づくりは窒素分を少なくすることがポイント

そう言えば、2015年10月25日の日本経済新聞「ひと協奏」欄に、福島の有機コメ農家丹野さん(74)が原発事故による風評被害で営農を断念し、長野に移住したという記事が載っていました。

丹野さんの土作りは、「家畜肥料は収穫量を上げる即効性はあるが、病気の原因にもなる」と言い、農薬や化学肥料だけでなく鶏糞などの家畜肥料も使わない。木の皮を発酵させた堆肥などを代用し、土の安全性を高めているとのことです。

病原菌に弱い高麗人参、しかも5~6年間も育てなければならないため、徹底して病気の原因を排除する必要があり、御薬園の方も家畜肥料を使わないようです。

高麗人参の栽培は稲荷神社にお参りすることも大切

高麗人参

御薬園の奥には、稲荷神社があります。鳥居の脇に立て札があり、次のように記されていました。

    稲荷社
    祭神倉穂魂命
    薬草栽培と籍田の礼(農事)のため守護神として祀る

高麗人参栽培が盛んになり、より多くの方がこの霊薬を手軽に摂り、健康寿命が延びるように祈願してきました。


国指定名勝 会津松平氏庭園「御薬園」

高麗人参

薬用植物標本園に隣接し日本庭園が広がります。1696年に松平正容が、小堀遠州の流れを汲むといわれている園匠・目黒浄定を招き、築庭させたものです。

約5,000坪というそれほど広くもありませんが、南東にある東山を借景し樹林の配置することで、小ぶりな日本庭園のわりに、大きな広がりを感じさせます。


高麗人参

松も黒松、赤松、五葉松と多種で杉、コウヤマキ、キャラボクなどの針葉樹と楓、モミジ、ケヤキなどの落葉樹がミックスされています。しかも「鶴ケ清水」と言われる薬泉から流れ込む「心字の池」によって適度な湿度が確保されています。

庭園内には高麗人参はありませんが、環境としてはいい感じです。

1932年に国の名勝指定を受けました。


売店で産地直売の高麗人参をゲット

高麗人参

売店では、高麗人参が会津人参のブランドで販売されています。販売元は清水薬草さんで、会津人参農業協同組合解散後のまとめ役をされています。

粉末、濃縮エキス液、切片、細根などがお手ごろな価格で販売されています。また、その他薬草も販売されており、薬草茶の試飲もできます。

清水薬草さんはこちらから☞☞☞清水薬草


高麗人参

焼酎漬は売り物ではありませんが、展示されていました。右端が高麗人参4年根です。会津では栽培効率を考えて4年根で収穫することもあるそうです。

中央と左側は、竹節人参(トチバニンジン)の焼酎漬です。左側のものは凄く太くかなりの上ものです。


御薬園へのアクセスはこちら☞☞☞国指定名勝 会津松平氏庭園 「御薬園」