高麗人参の真っ赤に熟した果実には、お肌にとっても良い効果があることをご紹介しました。
こちら→「高麗人参の果実ジンセンベリーの5つの美肌効果」
そして、実際に福島県会津の高麗人参生産農家さんの協力を得て、果実を回収し加熱濃縮。これを手作り石けん工房「プリマリア」で石けんに。
工房「プリマリア」は大自然が豊かで風光明媚な名峰磐梯山の北側の裏磐梯にあります。代表の岡野さんの長年の経験と知識を活かし、米ぬか油をベースにオリーブ油やキャスター油など数種の油に高麗人参果実を配合して、高麗人参果実の石けんをプロデュースしました。
発売前のモニター評価では93%の女性から満足をいただきました(→こちら)。とくに中高年のマダムの方々には大変好評をいただきました。
福島県会津保健所へ化粧品の申請も終え、昨年(2016)11月に「高麗人参果実の石けん」として販売を開始しました。お求めは、高麗人参通販サイト「パナックスマルシェ」へお越しくださいませ。
前置きが長くなりましたが、実は高麗人参の果実には、ジンセノサイドという有効成分以外にも、美肌成分が含まれています。そのことについてご紹介します。
高麗人参の新たな美肌成分シリンガレシノール
高麗人参の果実の美肌成分はジンセノサイドだけではありません。ジンセノサイドに加え優れた美肌成分が含まれていることが最近の研究で明らかになってきました。その成分とは、シリンガレシノール。高麗人参の根には含まれず、果実だけに含まれています。
シリンガレシノールとは、
シリンガレシノールは、植物に含まれる化合物リグナンの一種。リグナンは、フェニルプロパノイド(C6-C3)化合物2つが結合した植物ポリフェノールで優れた抗酸化作用を持っていることで知られています。
梅に含まれるシリンガレシノールで高血圧症の改善効果やピロリ菌抑制効果が確認され、食品や医薬品に利用されています。
シリンガレシノールの美肌効果については、いち早く研究を始めた日本の資生堂に続いて、韓国大手化粧品メーカーのアモーレパシフィック社でも研究が進んでいます。その最前線を紹介します。
資生堂のシナモン・シリンガレシノールの美肌メカニズム
資生堂が着目したのはケイヒ(桂皮)、クスノキ科の常緑樹の皮です。一般的には、シナモンといった方が通じるかもしれません。このシナモンから抽出したシリンガレシノールの美肌メカニズムとは、
美肌は栄養分の供給と老廃物の回収がポイント
私たちの皮膚にシワやくすみなどの劣化を生じさせる原因は、外的なものとして紫外線の影響が大きいですが、皮膚の細胞を再生する力、いわゆるターンオーバーすることができれば肌の劣化は防げます。
このターンオーバーに欠かせないもの、それは細胞再生の原料となるタンパク質などの十分な栄養分と酸素です。それを運んでくれるのが毛細血管です。
また古くなった細胞に溜まった不要な水分、沈着した色素や老廃物を排出する必要があります。これらは、くすみやシワ、むくみの原因となります。これを担ってくれるのがリンパ管です。
毛細血管とリンパ管は美肌を保つためのインフラです。
美肌インフラ給排水管に漏れはありませんか
美肌のインフラである血管とリンパ管は、それぞれ内皮細胞と壁細胞で構成されています。
これら二つの細胞は加齢とともに接着力が低下し、剥がれて隙間ができます。そして血管からは栄養分や酸素が漏れてしまいます。せっかく高価なコラーゲンやサプリメントを摂っても漏れてしまっては勿体ないことです。
またリンパ管は、余分な水分や老廃物を排出することができず、これらは体内に溜まっていきます。
その結果、皮膚細胞のターンオーバーが行われず、シミ・シワ・くすみ・むくみなど恐ろしい事態が生じます。
細胞の接着剤Tie2を活性にするシリンガレシノール
この内皮細胞と壁細胞の接着力のカギを握るのがTie2(tyrosine kinase with lg and EGF homology domain-2)です。日本語では、受容体型チロシンキナーゼ(タンパク質のチロシン残基をリン酸化する酵素)といいます。そして、このTie2を活性化するのがシリンガレシノールなのです。
シリンガレシノールがTie2を活性化し、皮膚血管とリンパ管の構造が安定化することで、十分な栄養分や酸素の供給と余分な水分や老廃物の回収、すなわち微小循環系の恒常性が維持され、健康な肌が保たれるというのが資生堂の考えです。
シリンガレシノールを抽出した植物については、文献ではシナモンでしたが、特許ではマンゴージンジャー、高麗人参から抽出したシリンガレシノールを請求範囲としています。それぞれの優劣についての説明がないのが残念ですが、アモーレパシフィック社が高麗人参から抽出したシリンガレシノールについて発表しています。
アモーレパシフィックのジンセンベリー・シリンガレシノールの美肌メカニズム
長寿遺伝子サーチュイン1の活性化による美肌
長寿遺伝子として良く知られているサーチュイン1(Sirt1)は、、酵母Sir2(silent information regulator-2、NAD+依存性ヒストン脱アセチル化酵素)と構造や機能が似ていて、この酵母が欠損すると寿命が短縮し、過剰発現すると延長することが確認されています。
すなわち、サーチュイン1はNAD+依存性ヒストン脱アセチル化酵素としての機能を持ち、生体内の様々なたんぱく質と相互作用することにより広範な生理機能を制御していると考えられています。サーチュイン1を活性にすれば、細胞の老化を抑制し、若返らせることが可能になります。まさに魔法の方法です。
サーチュインを活性化する方法として、カロリー制限し飢餓状態にする方法が広く知られています。が、誰しも楽したいもので、サーチュインを活性化する物質の研究が活発に行われています。そんな中で、サーチュイン活性剤としてシリンガレシノールが注目されています。
ジンセンベリー・シリンガレシノールはサーチュイン1を4倍元気に
アモーレパシフィック社は、高麗人参の果実(ジンセンベリー)から抽出したシリンガレシノールの評価を行っています。高麗人参と言えば根ですが、根からの抽出も試みたようですが含有されなかったと報告しています。
そして、そのジンセンベリーのシリンガレシノールでサーチュイン1が活性することを確認し、ヒト角質形成細胞と線維芽細胞を用いた実験でサーチュイン1の発現を4倍以上増加させたとしています。サーチュイン1の増加は血管内皮細胞の酸化スト レス抵抗性を高め、血管内皮細胞老化を抑制し、血管の新生や発芽に大きな役割を果たします。
長寿遺伝子サーチュイン1を活性化し、皮膚細胞の老化を抑制し若返らせようというのが、アモーレパシフィック社の考え方です。そして、下記の試験を行いその有効性を証明しています。
1.メラニン生成抑制効果の評価
2.チロシナーゼ活性抑制効果の評価
3.外用剤としての美白効果および肌色の均一性の評価
4.角質量減少効果の評価
5.経口摂取時の美白効果および肌色の均一性増加試験
6.ヒト角質形成細胞でのフィラグリンとインボルクリン(皮膚のバリア機能)の発現促進効果の評価
7.ヒト角質形成細胞でのMMP-9(タンパク質分解酵素)の発現およびコラーゲン分解抑制効果の評価
8.線維芽細胞でのTGF-β1(細胞増殖因子)の発現促進効果の評価
9.無毛マウスの皮膚でのしわ生成抑制および経皮水分喪失量抑制効果の評価
それぞれの項目には専門的な用語が含まれていますが、美肌に気を使われている方ならご存知の方が多いと思い、詳細な説明を省略させていただきました。
これらの結果をまとめますと、高麗人参の果実から抽出したシリンガレシノールは、極めて優れた美白効果、肌色の明るさや均一性を高める効果があり、シミ、そばかす、肌のくすみ、老人性色素斑、ホクロ、母斑、ダークサークルなどの色素沈着を改善し、角質除去および角質ターンオーバーを促進する作用があります。
アジアのコスメ大手2社の最新美肌情報を見てきましたが、シリンガレシノールが今後大きな脚光を浴びそうです。単に、表面的なスキンケアではなく、細胞や遺伝子の活性化による若返りコスメの時代に入ろうとしています。
植物が産み出す未知の成分
資生堂とアモーレパシフィック社のシリンガレシノールの評価を比較すると、アモーレパシフィック社の方が優れた美肌効果を示しています。これは、単にシリンガレシノールという成分だけでなく、それを抽出した植物由来の何かがあるのではないかと思います。
二千年以上にわたり不老長寿の霊薬と云われてきた高麗人参、この植物が産みだす成分がまたひとつ明らかにされました。長寿遺伝子サーチュイン1を活性化するその薬効はまさに不老長寿の霊薬と呼ぶにふさわしいものです。
しかし、まだまだ明らかにされていない成分が含まれているに違いありません。そして、その成分は高麗人参が育った土壌や森に棲む様々な樹木や草本、キノコや微生物との共生から産み出されるのではないかと思っています。そういう思いで菌根菌による高麗人参栽培に取り組んでいます。
<参考文献>
1)澤根美加(資生堂)他、「皮膚老化において重要な役割を担う血管・リンパ管」、J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn. 46(3)188-196(2012)
2)公開特許公報(A) 特開2012-236795、Tie2活性化剤及びリンパ管安定化剤、出願人:株式会社資生堂
3)Juewon Kim, Si Young Cho et al , Effects of Korean ginseng berry on skin antipigmentation and antiaging via Fox03a activation, Journal of Ginseng Research(2016)
4)公表特許公報(A) 特表2014-530906、シリンガレシノールを含む皮膚改善用組成物、出願人:株式会社アモーレパシフィック
5)大田 秀隆、長寿遺伝子 Sirt1 について、日本老年医学会雑誌 47巻 1 号(2010:1)