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高麗人参とその仲間の植物たち

世界中には高麗人参に似た植物が自生しています。薬効には多少の差がありますが、いずれもそれぞれの土地で古くから民間治療薬として珍重されています。

■高麗人参(オタネニンジン)

一般的に薬用人参とも呼ばれ、ウコギ科に属する多年生宿根草で冷涼な地帯に生育する半陰地性の植物です。原産地は北緯39度から47度に位置する北朝鮮、中国北部からロシア沿海州に自生しています。また、朝鮮半島を中心に栽培や加工が発展したため、朝鮮人参とも呼ばれます。朝鮮という名の歴史的な背景や、高麗人参が発展したのが高麗王朝時であったため、現在は高麗人参が一般的な名称として広く使われています。

学名は、オタネジンジン。英語名は、Panax Ginseng..C.A.Mey.。1843年ロシアのCarl Anton Meyerが命名しました。Panaxには「万病に良い」という意味があります。学名にPanaxと命名されているとおり、学問が認める薬効といえます。命名当時には、まだ成分の化学分析もなかったと思いますが、二千年の人体実験による薬効は科学も認めるところであったといえます。

日本には自生していませんでしたので、中国や朝鮮半島からの輸入に頼っていました。輸入で金(Gold)が流出することに危機感を持った徳川幕府八代将軍徳川吉宗は、各藩に人参栽培を命じました。ここからオタネニンジンと呼ばれるようになりました。

現在の三大産地は、福島県会津地方、長野県佐久小県地方、島根県大根島です。それぞれ産地の名前をつけて、会津人参、雲州人参、信州人参と呼びブランド化を図っています。いずれの産地も円高による輸出の落ち込みや後継者不足やで生産量は減少しています。各地それぞれ地域資源として再興に取り組む活動が始まっています。

■アメリカ人参

1714年にケベック在住のフランス人宣教師のファザーラフィトーが、英領カナダのモントリオール均衡の森林中で人参に酷似した植物を発見しました。高麗人参と同じウコギ科で、薬効成分もほぼ同じであることが判明しました。この人参をインディアンに採取させて香港に輸出し、広東人参の名称で取引が行われました。

■竹節人参(ちくせつにんじん)

日本には高麗人参の自生はありませんが、徳川幕府寛永年間(1630年代)に、明の帰化人何欽吉(かきんきち)が九州の宮崎で、高麗人参と類似する植物として竹節人参を最初に発見しました。幕府が高麗人参の代用品として販売を許可し、庶民の人参として需要を補いました。中国の薬局方 (中国薬典) でも「竹節人参」として規定されております。日本各地 (福井、長野、奈良、群馬、香川、鹿児島、福島など)に広く産しており、日本特産の人参です。葉がトチノキの葉に似ていることからトチバニンジンとも呼ばれています。

■田七人参(でんしちにんじん)

三七人参(さんしちにんじん)、田三七(でんさんしち)とも呼ばれます。種を播いてから3~7年たたないと収穫できないことからこう呼ばれています。雲南省や広西省など中国南部に産出するウコギ科の植物。日本に紹介されたのは昭和に入ってからと新しく、止血消炎効果がある生薬です。また最近では、ライオン株式会社が血液から筋肉への糖の取り込み量を増加させ高血糖を抑制する作用を発見し研究を続けています。

参考 : ライオン田七人参研究