おたねくん、日本の五葉松さんもいい伴侶になりますよ。
※おたねくんは、会津オタネニンジンのゆるキャラ(ふなっしーと仲良し非公認)
高麗人参が朝鮮松(チョウセンゴヨウ)としか共生しないとすると、日本の山林にはチョウセンゴヨウがありませんので、日本では高麗人参は野生化しないことになります。日本で山参を創ることはできないのでしょうか。
しかし日本には、チョウセンゴヨウと同じように5本の針葉をもった五葉松(ゴヨウマツ)があります。ゴヨウマツがチョウセンゴヨウと同じように高麗人参と共生してくれるといいのですが。
おたねくん、どお?
日本のゴヨウマツとチョウセンゴヨウとの3つの共通点
ゴヨウマツとチョウセンゴヨウとはこんなにも共通点があります。
外観の特徴が似ている
日本でゴヨウマツといえば盆栽を思い浮かべますので、樹高の低い樹木と思われている方もおられるかもしれません。しかし自然のゴヨウマツは樹高20~30メートルにもなります。
樹皮は灰褐色で、幼木時は平滑ですが成長すると鱗片状に剥がれます。針葉は5枚で、青みを帯びた緑色で、長さは園芸種と違い約8cmと長い。
園芸種のゴヨウマツと違い自然のゴヨウマツはチョウセンゴヨウと似た外観をしています。
学術的にはどちらもストローブ亜属に分類される
ゴヨウマツの学名は Pinus parviflora。英名は Japanese white pine。クロマツやアカマツと同じくマツ科マツ属ですが、ゴヨウマツは亜属レベルでストローブに分類されます。チョウセンゴヨウも同じストローブ亜属に分類されています。
ちなみにこれ以外に、ストローブ亜属に分類されているものは、Chinese White Pine, Siberian Dwarf Pineがあります。
共生する外生菌根菌はどちらもベニハナイグチ
マツ科マツ属ストローブ亜属に属するマツと共生する外生菌根菌について、1986年のカナダの植物会誌でRandall BLらが発表しています。それによると、ストローブ亜属の共生菌根菌は、ベニハナイグチ(Suillus Pictus)だとしています。(※1)
また、日本では2004年京都でチョウセンゴヨウとベニハナイグチのほ場実験で、ベニハナイグチの胞子の分布状況を数年にわたって調べた研究がされており、チョウセンゴヨウとの共生関係が確認されています。(※2)
さらに、2010年には筑波大学広瀬先生(現日本大学薬学部)は、ベニハナイグチの宿主特異性について報告されています。ベニハナイグチのみの接種実験ではアカマツやクロマツにも感染することもあるが、自然環境下ではアカマツやクロマツに感染することはなく、ゴヨウマツのみに感染することを明らかにされています。すなわち、ゴヨウマツとベニハナイグチとの間には強い共生関係があることが確認されました。(※3)
ベニハナイグチは、イグチ科アミハナイグチ属の食用キノコ。傘は最初は円錐形だが成長すると平らになり、大きさは3~10cm。傘の色は赤色のちに褐色になります。
ベニハナイグチの写真は、広瀬先生のサイトからお借りしました。
日本にも野生の高麗人参・山参はある
高麗人参のふるさと長白山にある朝鮮松と日本の山林に生えるゴヨウマツは同じ外生菌根菌と共生していることが分かりました。その名はベニハナイグチ。
ゴヨウマツの林を探せばそこに高麗人参が自生している可能性があります。
高麗人参の野生化の条件を満たす場所
今村鞆の言う野生化の条件は「鳥」+「自然環境3要件」でした。これに、私は菌根菌を追加しました。すなわち「菌根菌」=「ゴヨウマツ林」です。
野生の高麗人参はここにある
日本三大五葉松と呼ばれる盆栽マツがあります。福島の吾妻五葉松、栃木の那須五葉松、、愛媛の四国五葉松が人気が高いようです。もちろん盆栽用のゴヨウマツが盛んな土地には自然のゴヨウマツの群生地があります。
そして、高麗人参のふるさと長白山と同じ火山であること、高麗人参栽培地から鳥が運べる距離であることを考えると、福島の吾妻山連峰、栃木の那須岳周辺が高麗人参の自生の可能性が高いと考えられます。
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<参考文献>
※1)Randall BL, Grand FL. (1986). “Morphology and possible mycobiont (Suillus pictus) of a tuberculate ectomycorrhiza on Pinus strobus”. Canadian Journal of Botany 64 (10)
※2)J. Kikuchi , K. Futai (2003).”Spatial distribution of sporocarps and the biomass of ectomycorrhizas of Suillus pictus in a Korean pine (Pinus koraiensis) stand” Journal of Forest Research,February 2003, Volume 8, Issue 1, pp 0017-0025
※3)Hirose D, Shirouzu T, Tokumasu S. (2010). “Host range and potential distribution of ectomycorrhizal basidiomycete Suillus pictus in Japan”. Fungal Ecology 3 (3): 255–60.