病気になりやすい人と病気になりにくい人がいます。いつも風邪を引いていたり、インフルエンザもいち早くもらってくる人がいると思えば、インフルエンザの流行っている中でもへっちゃらな人もいます。
これって何の差?ってなテーマで、今年の2月に「世界一受けたい授業」で放映されました。
観られた方もおられるかと思いますが、これは免疫力の差です。そして、免疫力を高める夢の物質LPSを紹介するというストーリーでした。
それと高麗人参がどう関係するかって?実は、このLPSという物質が高麗人参に非常に多く含まれているのです。
免疫細胞マクロファージが元気な人は病気にならない
病気になるのは、病原菌が口や皮膚などから体内に入って増殖する場合と、体内で病気の原因となるものが生み出される場合があります。
マクロファージは体中いたるところに存在していて、皮膚から細菌が侵入すればこれを食べ肌荒れを改善したり、脳内に不要なたんぱく質のアミロイドβがあればこれを食べアルツハイマー病を予防します。また、ガン細胞や腎臓結石など体に不必要なものを食べて掃除をしてくれます。
外部からの病原菌による感染予防だけでなく、体内で発生する老廃物など、体にとって不必要なあらゆるものを貪欲に食べて処理してくれることで、体の恒常性が維持され健康を保つというわけです。
すなわち、病気にならない人は、マクロファージが元気に機能している人ということです。
マクロファージが元気をなくす原因
マクロファージが元気かどうかはいったい何で決まるのでしょうか。
まずマクロファージが元気をなくす原因は、ストレスと不規則な生活です。そういう時こそ頑張ってくれるのがマクロファージじゃないのかって思っておられる方も多いでしょう。
もちろん、マクロファージ君はあなたの体を守ろうと頑張っています。頑張っているご主人様を守ろうと必死に病原菌と戦ったり、体内の掃除をしてくれています。しかし、そういった状態が長く続くとマクロファージ君も次第に疲れていきます。そして、細菌や老廃物が体内にあふれ病気を発症することになります。
マクロファージを元気にする夢の物質LPS
忙しくて規則正しい生活ができない方、ストレスに弱い方にも朗報です。マクロファージを元気にする物質があります。
それはLPS(リポポリサッカライド)です。免疫力を高める物質としてキノコや海藻などに含まれるβグルカンや、乳酸菌に含まれるペプチドグルカンが知られていますが、LPSはこれらの1000~10000倍マクロファージを元気にします。本当に夢の物質です。
この夢の物質LPSを含む食材は次の表の通りです。表中の人参は高麗人参のことを指しています。20μg/gと高いレベルにありますが、別の資料では同じ高麗人参でも50μg/gと記されているものもあります。この差については後ほど触れたいと思います。
サンプル | LPS含有(μg/g) |
明日葉(粉末) | 13.8 |
ゴーヤチップ(粉末) | 0.2 |
桑の葉(粉末) | 1.1 |
大麦若葉(粉末) | 0.5 |
ケール(粉末) | 0.2 |
ほうれん草(粉末) | 1.3 |
わかめ(乾燥) | 21.2 |
メカブ(粉末) | 42.8 |
クロレラ(市販健食) | 0.2 |
ノコギリヤシ(市販健食) | 0.4 |
ホワイトソルガム粉 | 2.3 |
小麦フスマ(市販健食) | 8.8 |
小麦胚芽(市販健食) | 7.5 |
シイタケ末(市販健食) | 2.0 |
麦芽大麦ファイバー(市販健食) | 3.0 |
渋柿(発酵食品) | 17.1 |
ドクダミ(乾燥) | 5.5 |
鬱金(漢方薬) | 30.0 |
人参(漢方薬) | 20.0 |
柴胡(漢方薬) | 40.0 |
冬虫夏草(漢方薬) | 60.0 |
レンコン節部(漢方薬) | 82.0 |
葛根(漢方薬) | 5.0 |
LPSってどんな物質
LPSはリポポリサッカライドの略で、日本語ではリポ多糖です。ある細菌の細胞壁外膜の構成成分です。
細菌にはグラム陰性菌とグラム陽性菌があり、細菌学者のグラム博士が染色のされ方で分類しました。ざっくりいうと細胞壁が厚いのが陽性菌、薄いのが陰性菌。陽性菌には乳酸菌やビフィズス菌や有益な菌もあれば結核菌や黄色ブドウ球菌など悪性のものもあります。陰性菌には大腸菌や酢酸菌があります。
世界一受けたい授業で先生を務めた杣源一郎博士が着目されたのはグラム陰性菌に分類されるパントエア菌という細菌です。
ではパントエア菌はどこにいるのでしょか?
パントエア菌は植物や森の空気中にも存在しているようですが、主に植物の根圏や根の細胞内にいます。
そして、菌根菌と同じように宿主植物に、窒素化合物や有機リン化合物の供給をしたり、病原菌から守ったり共生生活をしています。宿主特異性(相性)は少ないようで、麦、芋、米、レンコンなど多くの作物と共生しています。
表「LPSを含む食材」の数値は、杣源一郎先生の著書「免疫ビタミンのすごい力」から引用しましたが、先生の別の発表資料では、高麗人参(表中の人参)は50μg/gとなっており、表中の20μg/gと大きく異なります。
表の下部には次のような注記がされています。「農産物や加工品なので、産地、時期、品種、農法などによって大きく異なります。」
つまり、栽培環境によって大きく左右されるということです。LPS成分を向上させるためには、畑の中の微生物にまで配慮した土づくりが必要です。農薬や化学肥料を使っていては論外です。
LPSを増やす農法とは
杣源一郎先生が著書の巻末で、青森のリンゴ農家の木村秋則さんとの出会いについて記されています。蛇の道は蛇と言えば失礼ですが、植物共生菌パントエアの杣源一郎先生が、「奇跡のリンゴ」で有名な木村秋則さんと出会うのは自然なことかもしれません。
木村秋則さんは、無農薬・無肥料でリンゴを育てることは不可能であると言われていた時代に、それを可能にする農法を編み出した方です。NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」で放映されたのでご存知の方は多いと思います。
その農法とは、失敗続きでもう死のうと思った山中で、驚くほど土が柔らかいことを知り生まれました。その柔らかい土は、この場所に棲む生きとし生けるものすべての合作である。リンゴの木はリンゴの木だけで生きているわけではない。虫や草や土壌中の微生物すべてがつくりだす生態系の中で生かされているということに気付きます。
地上部だけでなく、土壌中の共生菌にも目を向け、微生物が棲みやすい環境を整えること、すなわち、ふかふかの柔らかい土づくりが重要であるということです。
杣源一郎先生が、持ち帰えられた土壌および果皮にはパントエア菌が多く採取されたのは言うまでもありません。
高麗人参にもパントエア菌が共生している
高麗人参にパントエア菌が共生していることを知ったのはこれがはじめてです。夢の物質LPSが多く含まれていることは、高麗人参がジンセノサイド以外の成分も非常に有効で、不老長寿の霊薬と言われる所以を科学的に補強してくれました。
私はかねてより、菌根菌が単に植物の成長促進や病原菌耐性、耐乾燥性を向上させるだけでなく、成分そのものにも大きな影響を与えるのではないかと考えていました。畑栽培された高麗人参と森で育った山参との圧倒的な効能の差は、菌根菌の種類が大きく影響していると考えてきました。そして、畑栽培のアーバスキュラー菌根菌と五葉松の外生菌根菌を追いかけてきました。
今回のパントエア菌の存在を知り、菌根菌のような菌類だけでなく、細菌(バクテリア)も植物と共生していること、しかも二次的産生物質ではなく、細菌自体が非常に有効な成分でできていることを知りました。
菌類に加え細菌にも目を向け、不老長寿の霊薬の栽培を探求していきたいと思います。