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安達太良山で、高麗人参の仲間の「竹節人参」5本見つけました。

高麗人参[安達太良山中に自生の竹節人参]

2015年9月の磐梯山登山では、残念ながら高麗人参を見つけることはできませんでした。
今回は、安達太良山(あだたらやま)の東斜面を探索して来ました。

安達太良連峰も高麗人参に適した環境

安達太良山は磐梯山の南東にある山で、磐梯山と同じ活火山です。磐梯山と違うのは独立峰ではなく、南の和尚山(1602m)から安達太良山(1700m)、鉄山(1709m)、箕輪山(1718m)、鬼面山(1482m)まで南北に約7kmつづく連峰となっています。

高麗人参"[安達太良山の火口より磐梯山を望む by Nakagawa]

安達太良山の西側には、火口の沼の平越しに、磐梯山の雄姿を望むことができます。磐梯山では残念ながら、高麗人参を見つけることはできませんでしたが、きっといつかは見つけてやるぞと再敬礼しました。

東側には、大河阿武隈川に注ぐ何本もの川があり、高麗人参に合った適度な湿度を保っています。また東側斜面なので朝日を浴びますが、西日は山影となり遮られるため高麗人参に適した環境となっています。

多くの人から愛され続けている安達太良山

本当の空MG_0122[高村智恵子のいう”ほんとの空” by Nakagawa]

もちろん、安達太良山は磐梯山同様に、日本百名山に選ばれており、多くの登山客に人気の山です。
また、安達太良山の麓の二本松市は、高村光太郎の妻智恵子の生誕の地であり、智恵子のいう東京にはない”ほんとの空”が阿多多羅山(あたたらやま)にはあります。

  • 智恵子は東京に空が無いといふ、
    ほんとの空が見たいといふ。
    私は驚いて空を見る。
    桜若葉の間に在るのは、
    切つても切れない
    むかしなじみのきれいな空だ。
    どんよりけむる地平のぼかしは
    うすもも色の朝のしめりだ。
    智恵子は遠くを見ながらいふ。
    阿多多羅山あたたらやまの山の上に
    毎日出てゐる青い空が
    智恵子のほんとの空だといふ。
    あどけない空の話である。
  • 出典:高村光太郎「智恵子抄」

長い年月が高麗人参の自生を育む?

高麗人参[安達太良山から望む福島盆地、上方右寄りの小山が信夫山 by Nakagawa]

残念ながら、高麗人参は日本には自生しておりません。しかし、ここ安達太良山東斜面は、高麗人参の一大産地である会津地方から、山越えですが直線で40Km程度です。
また北東には、福島盆地の信夫の国(現在の福島市)が広がります。今では高麗人参の栽培は全く行われていませんが、江戸中期から末期には、信夫の国でも高麗人参の栽培がおこなわれていました。

東北の大自然で育った元気な野鳥たちが、会津や福島から種を運んで来てくれることも十分考えられます。これだけ高麗人参の生育環境が整っているのでチャンスはゼロではありません。種さえ落ちれば根付くはずです。大きな期待をしながら探索しました。

高麗人参の仲間の竹節人参を発見!

高麗人参[安達太良山中に自生している竹節人参]

山の中腹でトチバニンジンを見つけました。葉がトチノキに似ていることからついた名前で、5枚複葉ですぐ分かりました。葉はすでに黄色く紅葉しているものもありました。真っ赤な実を付けていたようですが、数個を残してほとんどは落ちていました。


高麗人参[竹節人参が自生している環境]

標高は600~700mくらいです。落葉広葉樹に針葉樹が3割ほどの森の中で、小さな川が流れている傍に生えていました。緩い斜面で南向きです。西側に尾根が走っており4時ころには太陽は山の向こうに沈みます。まさに高麗人参の生育にぴったりの環境です。


高麗人参[竹節人参の根茎、土は非常に柔らかい]

近くに数本を見つけましたが、内一本を掘らせていただきました。土はものすごく柔らかく、腐葉土といった感じです。素手で掘ることができました。

根は高麗人参とは違い竹の根(地下茎)に似ていますので、竹節人参(チクセツニンジン)とも言います。利用するのは、正確には根ではなく根茎です。

一年に一節しか成長しませんが、掘った物は15節ありました。15年でこの大きさにしかならないのかと、その貴重さに畏敬の念をもちながら、元通り埋め戻いしておきました。


竹節人参も優れた薬効を持っている

竹節人参は、高麗人参と同じウコギ科オタネニンジン属で、日本で自生している高麗人参の仲間です。

江戸時代(1630年代)に徳川幕府が、明の帰化人何欽吉(かきんきち)に高麗人参を探させたところ、九州の宮崎で発見しました。幕府は高麗人参の代用品として販売を許可し、高麗人参大ブームの庶民の人参として需要を補いました。

中国の薬局方 (中国薬典) でも「竹節人参」として規定されています。効能の成分であるサポニンは高麗人参に劣るものの、解熱、去痰、健胃薬などの働きがあります。

日本各地 (福井、長野、奈良、群馬、香川、鹿児島、福島など)に広く産しており、今でも民間薬として珍重されています。

韓国では野生の高麗人参(山参)を掘るプロフェッショナルをシンマニといいますが、シンマニの域には程遠いですが、高麗人参が好む生育環境というものが、少しずつ分かってきたような気がします。