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野生の高麗人参・山参の栽培1年目の記録(3)

高麗人参[吾妻五葉松林で育った山参1年根]

前回のブログ(20170302)のつづきの第3報です。

不老長寿の霊薬を目指して、吾妻五葉松林、アカマツ林、コナラの林、スギ林で高麗人参の自然栽培をしています。

2015年12月1日に種を播き、2016年4月中旬に芽を出した高麗人参の1年生は、3枚の葉を広げ、それぞれの森に守られてすくすくと成長しています。

今回は、季節も移ろい落葉するまでの様子と土中の根の成長の記録です。 

野生の高麗人参の1年間の成長

出芽した1年目の小さな葉っぱは3枚。植物がすくすく成長するためには、太陽の光が必要です。成長の糧は何といっても光合成です。光を当てれば当てるほど葉が大きくなり葉の数が増えるかと言えばそういうことはありません。高麗人参は陰性植物です。

高麗人参の好きな明るさは人も心地よい明るさ

2017/01/20のブログに書いたように、高麗人参は、光合成によって栄養をつくる一方で、外生菌根菌を通してチョウセンゴヨウから栄養をもらう部分的菌従属栄養植物と考えられます。

代表的部分的菌従属栄養植物のキンランは、コツブダケを通してコナラから栄養をもらっています。その従属比率は、坂本裕紀らの調査によると40%程度としています。さらに、より菌従属度の高いギンランにおいては60%に達し、自分で光合成をするよりも貰う栄養の方が多くなっています。

今のところ、高麗人参がどの程度の比率で菌従属しているか調査した文献は見当たりません。個人ではここまでの測定はできませんが、行く行くは挑戦してみたいと思っています。ご声援よろしくお願いします。

そんなことを思いながら、照度について一応測定しました。一応とやる気のなさが出てしまいましたが、森の照度は時間や天候で大きく変動するため、あくまで目安にしかなりません。

高麗人参[森林の照度測定(変動大きい)]

日陰の時には、500ルクス程度の所が、木漏れ日が当たった途端に20000ルクス以上のレンジオーバーになったりします。また、雨天と晴天でも大きく変動します。測る意味をあまり感じません。

どちらかというと、樹冠率で表すのが良いのかもしれません。しかし、これもなかなか測定しづらく下から樹冠を見上げた写真を撮ることにしました。

高麗人参吾妻五葉松林の樹冠

菌従属度は分かりませんが、高麗人参の成長にとって照度は重要です。光合成だけでなく成長期間などにも影響していますので、また別の機会に報告します。

今回の栽培林についていえば、マツ林は木漏れ日が入って比較的明るく、コナラの林は少し暗く、スギ林はちょうどよい明るさで、しかも人工林のため規則正しく生えていて場所による明るさの変動が少なくていい感じです。

山参はチョウセンマツと広葉樹の森に自生していると言われるように、直射日光の当たらない少し暗めの森林が適しているようです。もちろんジメジメしたところはNGです。菌根菌が育ちません。

アカマツ林の高麗人参の定点観察

アカマツ林は、自宅から最も近く頻繁に足を運べるので、定点観察しました。4月の出芽から、10月の枯れるまでの高麗人参1年生の1年間の様子です。
高麗人参[アカマツ林で育つ高麗人参1年生の1年]

9月25日の写真を見るとわかりますが、右側の数本に木漏れ日が強く当たっています。そして10月16日には、その部分の葉が、黄化したり枯れて無くなったものも見られます。これからも強い光は、高麗人参にとって好ましくないことが窺えます。

いずれにせよ、会津地方の畑栽培の高麗人参が9月に入ると葉が枯れ始めるのに対し、アカマツ林の高麗人参の葉は、10月中旬頃まで緑を保っていました。これは外生菌根菌による耐寒性の向上と言っても良さそうです。

野生の高麗人参・各森林の根の成長

4月出芽後、いずれの山林の高麗人参も病気になったり虫に食べられたりせず順調に成長しました。10月7日にそれぞれの森から数本を掘り起こしてみました。約6か月間の成長の証です。

10月7日時点で、まだまだ枯れる様子もない緑の葉っぱを付けていましたが、根を掘り起こしてみました。

高麗人参[掘り出した高麗人参1年根:左から、吾妻五葉松林、アカマツ林、コナラの林、スギ林]

野生の高麗人参は華奢

写真を見ての通り、どの森林の高麗人参も細く短く寂しい限りですが、そんな中でも、小さい順に、マツ<スギ<コナラという感じでしょうか。そもそも大きさを狙っているわけではありませんので、大きさはさほど問題ではありません。

問題は、民話や伝説で伝えられる不老長寿の霊薬と云われる薬効が得られるかどうかです。そのためには、吾妻五葉松と共生することと何十年も生き続ける丈夫さが必要です。

野生の高麗人参は華奢だけど丈夫

高麗人参[病害虫に悩まされる畑栽培]

4月の出芽以来、農薬および化学肥料は全く撒布していませんが、立ち枯れ病や虫食いなどの発生は、どの森林の高麗人参にもありませんでした。

ボルドー剤などの薬剤散布を必要とする畑栽培に比べ、病害虫耐性の向上が認められます。


高麗人参[畑の高麗人参は9月には葉が枯れる]

また、標高が高く秋の訪れが早い森林にもかかわらず、高麗人参1年生は、10月下旬まで葉をつけていました。畑栽培の高麗人参が、9月に入れば枯れ始めているのに対し、耐寒性の向上が認められます。

これにより、森林の方が畑に比べ、1月半長い成長期間を確保することができています。

耐病害虫性と耐寒性の向上は樹木の外生菌根菌による効果と考えられます。そして、いまのところ森林の樹種による差は見られません。

次回は、根に菌根菌が共生しているか顕微鏡で観察した結果を報告します。
To be continued.

    1)『日本産キンラン属における共生菌の多様性および共生菌への栄養依存度の解明』(坂本裕紀ら、第11回アジア太平洋蘭会議・蘭展 沖縄大会 講演要旨集 2013年)
    2)Su-Young Woo et al (2004) “Growth and Eco-Physiological Characteristics of Panax ginseng Grown under Three Different Forest Types”, Journal of Plant Biology September 2004, 47 (3) : 230-235
    3)Hyoungmin Suh, Su-Young Woo et al (2011) “Forest cultivated ginseng in Korea : all cure medicinal plants”, Journal of Medicinal Plants Research Vol5(22) : 5331-5336