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長白山で野生の高麗人参を復活させる中国の50年プロジェクト

高麗人参ふくしまの広大な樹海 by Nakagawa
高麗人参のふるさと長白山で山参が復活?

韓国の新聞東亜日報(Dong-A Ilbo)が、2013年5月28日朝刊で「中国、白頭山一帯に高麗人参種子5万トンを撒布」と報じました。

白頭山は長白山の韓国名です。

東亜日報は、日本統治時代の1920年4月1日に創刊され、本社はソウル特別市鍾路区。発行部数は二百万部余りにのぼり、朝鮮日報、中央日報とともに韓国の三大紙のひとつです。

中国が高麗人参ビジネスに本腰

新聞見出しの「5万トン」は、記事の中身から「5トン」の間違いです。韓国の焦りによるミスでしょうか?

中国のブランド戦略による巻き返しが始まった

中国は3年間で合計9トンもの高麗人参の種子を長白山の森林に空中撒布しています。種子の個数で言うと9千万粒です。

播種の面積は19万ヘクタールで、大阪府とほぼ同じ面積です。何とも壮大なプロジェクトです。

もともと中国の高麗人参の生産量は世界一ですが、多くは韓国に横流しされ韓国産として売られています。これは、中国産には品質が悪いイメージがあり、低価格で買いたたかれるためです。中国産の価格は韓国産の価格の10分の1です。

高麗人参が自生していた長白山に種子を播いて、自然環境で育て野生化させます。そして4世代を経ると本物の山参になるそうです。もちろん薬効も不老長寿の霊薬と呼ばれるものとなります。

中国産の劣悪な品質のイメージを払拭することを狙っています。40~50年先を見据えての事業です。

成功のカギを握るのはチョウセンゴヨウ

このプロジェクトは、韓国にやり込まれている高麗人参ビジネスの起死回生の一発です。その成功のカギを握っているのは、間違いなくチョウセンゴヨウの森です。高麗人参は、チョウセンゴヨウの森に守られて無農薬・無肥料で育ちます。

しかし、チョウセンゴヨウの種子は乱獲されチョウセンゴヨウが減り、森全体が広葉樹化していることが心配されます。チョウセンゴヨウ復活がどの程度進んでいるかがポイントです。

このプロジェクトの20年ほど前の1994年に中国だけでなくドイツとアメリカの研究者も参画して、チョウセンゴヨウと広葉樹の森林の将来の予測が行われています。今回のプロジェクトを踏まえたうえでの調査だったのかもしれません。

もはや高麗人参ビジネスは、森林ビジネスと同様のスパンで考えないといけないのかもしれません。

韓国はどんな一手を打ってくるか注目

韓国では高麗人参に関する事業は1999年に民営化されたものの、その前の1世紀は、政府直轄事業として統制されてきました。韓国政府にとって高麗人参は、朝鮮通信使の時代から現在に至るまで、韓国に外貨をもたらす重要な輸出品でした。

今回の中国のプロジェクトによる長白山産の高麗人参が、市場に出回るのはまだまだ先になりますが、成功すれば恐らく畑栽培の高麗人参の市場価格は下落し、韓国の劣勢は必至です。韓国にとっては重要な輸出品目ですので、どんな手を打ってくるのか注視していきたいと思います。

国産オタネニンジンの復活に燃えている私にとっても気になりますが、秘策はあります。乞うご期待。

以下、新聞記事の全文です。

    中国、白頭山一帯に高麗人参種子5万トンを撒布

    Posted by Dong-A Ilbo, May. 28, 2013 03:00,

    中国が世界的な高麗人参産地の白頭山(ペクトゥサン、中国名・長白山)一帯の野生高麗人参の資源を増やすため、最近、軽飛行機で高麗人参の種5トンを撒いたと、中国日報が27日報道した。11、12年それぞれ2トンずつ高麗人参の種を空中撒布したのを含めると、合わせて9トンを撒いたことになる。

    同紙はこの種子が4代目になると、山参(野生の高麗人参)の種とそっくりになり、育った人参の薬効も山参とほぼ同じになると報じた。中国当局は今回の作業が40〜50年後、白頭山の野生高麗人参の数量を大きく増やす上で大きな役割をすると期待している。

    「白頭山人参野生資源回復プロジェクト」という名の人参種子空中撒布は、11年から通化市と製薬会社が11年から3年計画で進めてきたものだ。当初、毎年2トンずつ撒いたが、最終年の今年は量を大きく増やした。

    高麗人参の種子が撒かれたところは19万ヘクタール(1900平方キロ)に達する完全な原始の山林状態が保存された白頭山自然保護区。白頭山海抜1600〜2000メートル地帯で希少な植物が多いところだ。

    中国当局は1980年代後半から大々的な高麗人参産業振興に乗り出したが、中国全土へ栽培面積が急速に増加して価格が暴落した上、低質の高麗人参が大量流通した。このため、国際市場で中国産高麗人参の競争力が大きく低下した。

    このため、今度の白頭山高麗人参種子の撒布は、白頭山高麗人参という野生環境を強調して韓国の牙城に挑戦しようとする試みと見られる。韓国産高麗人参は最高の国際競争力を持っている。

    農協中央会などで高麗人参を約40年間研究してきたイ・グァンスン医学博士は、「吉林省政府が白頭山高麗人参を広報するため、管理策をまとめて施行中であり、内外への広報にも積極的だ」と話した。12年吉林省高麗人参産業の総生産額は前年対比53.8%成長して200億人民元(約3兆6632億ウォン)を越えた。