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野生の高麗人参・山参の栽培1年目の記録(2)

高麗人参[吾妻五葉松林で出芽した高麗人参1年生]

前回のブログ(2017/02/28)のつづきです。

2016年12月1日に、吾妻五葉松林、アカマツ林、コナラの林、スギ林に高麗人参の種を播きました。

そして、年が明け春が来て、4月中旬に高麗人参の出芽を迎えます。高麗人参の出芽時期は、桜の開花時期とほぼ同じですので、桜の開花予報は大いに参考になります。 

今回は、出芽と成長、森林に棲む外生菌根菌をどう把握していくかについて記録しました。

高麗人参の1年生の出芽

高麗人参高麗人参の出芽@吾妻五葉松林

今年は4月中旬に出芽が始まりました。写真は吾妻五葉松林に播種した高麗人参の新芽です。堆積した松葉の間からまだ開き切らない3枚の初々しい若葉です。4月19日の様子です。

吾妻五葉松林、アカマツ林、コナラの林、スギ林のいずれも同時期に無事に出芽しました。特に発芽率や葉の大きさに差は見られませんでした。


先輩人参達の出芽の様子

同日、近くのスギ林には、自生の竹節人参(トチバニンジン)の大きくて太い芽が出ました。4月15日の会津地方の畑栽培の高麗人参の出芽状況と比べると若干スギ林の方が遅いようです。

高麗人参[上:竹節人参(トチバニンジン)、下:高麗人参]

太さはどちらも同程度ですが、高麗人参は5年目の出芽に対し、竹節人参は師匠によると20年以上前からここに生えてるそうです。いかに自然栽培では、成長が遅いかが窺われます。


高麗人参[これほど立派な竹節人参は珍しい]

ちなみに、師匠の自宅には竹節人参の焼酎漬があります。この太さ一体何年物でしょう?

これほど太く立派な竹節人参は見たことがないと先生。

まさに竹節人参版の山参と言えます。


各森林の高麗人参の生育状況

4月中旬の出芽後、いずれの森林の高麗人参は問題もなく順調に成長しました。

畑栽培のものに比べ、葉の大きさが若干小さいものの、茎の徒長がないためしっかりした感じです。写真は7月下旬のものです。

1年目の高麗人参は、葉が3枚しか出ません。しかも、傷つけて脱落しても新たに生えることはありません。大切に育てなければいけません。

高麗人参高麗人参1年生:左から、吾妻五葉松林、アカマツ林、コナラの林、スギ林

7月になれば新芽が

もし茎が折れてすべての葉がなくなったとしても、諦める必要はありません。

高麗人参[7月には来年の新芽をつける]

7月に入っていば、すでに来年の新芽を持っていますので、そのままにしておけば来春出芽します。高麗人参は、じっと静かに来年まで耐えて待ちます。

葉がなくなって光合成ができないのに生きていられるのは何故でしょう?菌根菌から栄養とエネルギーを融通してもらっているからです。これが、私の持論です。


野生の高麗人参の成長環境の指標

いくら自然栽培と言っても、高麗人参にとってより良い環境とは何かを探りたいものです。森の中で順調に育ってくれるかどうか知る方法はないものでしょうか?

何年も経って駄目だったでは寂しくなります。将来間違いなく山参に育つために、現在把握しておかないといけない指標となるものはないのでしょうか?

野生の高麗人参にとって必要なのは、何といっても外生菌根菌の存在です。その存在を確認する方法は2つあります。

ひとつは、樹木の根に外生菌根菌の菌根が見られるかどうか。もう一つは、外生菌根菌の子実体であるキノコが豊富かどうか。とりあえずこの2点を指標とすることにしましょう。

樹木の根に菌根が見られるか?

今回の4種類の樹木の内、スギ以外は外生菌根菌と共生する植物です。樹木に外生菌根菌が共生しているかどうかは根を観察すれば分かるそうですが、これには、やはり専門性が必要です。

高麗人参[樹木の菌根観察]

樹木医の三瓶さんにご協力をお願いしました。環境保護ボランティア団体の松枯れ防止ネットワーク代表の宗實さんを通じてご縁をいただきました。

三瓶さんは、同組織の福島の代表で、東日本大震災の津波によって失われた海岸線のマツ林の再生に努めておられます。そんなお忙しい中、快く引き受けてくださり、感謝感謝です。


高麗人参[マツの根に共生する菌根]

数か所の森林を診断していただきました。マツの株元の根を掘って、菌根の有無を確認します。写真に見るように、マツの根にY字型に付いてるものが菌根です。

尾根筋の適湿な土壌に生えるマツにはそこそこ発見できましたが、谷筋の湿気のある土壌の森林では見つけるのは困難でした。

山参を作るにはもっと菌根を増やし、宿主のマツに元気になってもらう必要があります。菌根密度と種類を指標として定期的な観察をしていきます。


その森林にキノコが豊富に生えているか?

外生菌根菌が共生しているかどうかを知るには、きのこの種類と量を見ればわかります。

キノコは外生菌根菌の子実体です。子実体というのは胞子をつくる器官で、子孫を残す生殖器官という意味では植物の花であり果実のようなものといってもいいでしょう。 

外生菌根菌の本体の菌糸は土の中にあり目に見えません。鉢植えのような場合は、根を鉢から抜くと外周に張り巡らされた菌糸が白く見えるので、一目瞭然に確認できます。しかし森林の場合はそうはいきません。そこで、地表に出ているキノコを見て、その数が多ければ菌糸も多いと判断できます。

栽培林に生えていたキノコは、写真の通りです。アーバスキュラー菌根菌のスギ林にはもちろんありませんが、コナラの林にも確認はできませんでした。
高麗人参[左2つは吾妻五葉松に生えたキノコ、右2つはアカマツ林に生えたキノコ]

キノコには、外生菌根菌のほか木材腐朽菌や落葉分解菌のものもあり、素人にはなかなか判別が難しいですが、形状に加え発生時期と樹種から判定してみました。

左の2つは7月末に吾妻五葉松林で見つけました。どちらもハナイグチ(ヌメリイグチ科Suillus grevillei)と思われます。一般的には、ゴヨウマツと近いカラマツとの共生が見られます。

チョウセンゴヨウや吾妻五葉松のマツ科マツ属ストローブ亜属に宿主特異性を持つベニハナイグチについては、残念ながら発見することはできませんでした。今後、ベニハナイグチの胞子を持ち込むことを考えていきたいと思います。

右の2つはアカマツ林で9月前半に発見しました。右側から、ヌメリイグチ(ヌメリイグチ科Suillus luteus)、次がシロオニタケ(テングタケ科 Amanita virgineoides)と思われます。一般的には、アカマツやコナラとの共生が見られます。

次回は、根を掘り起こして、根の成長と葉が枯れるまでを報告します。

To be continued.