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高麗人参の根は「人の姿」をしているものほど商品価値が高い

高麗人参

高麗人参は「人の姿」に似たものほど価値があるって知っていました?

健康食品やサプリメントとして利用されている方がほとんどだと思いますので、高麗人参の形を気にする必要もありませんが、古来より高麗人参は人の形をしたものが商品価値が高いとされています。

市場価格が高い高麗人参の「御姿」とは?

高麗人参[via:農林水産省 おたねにんじん種審査基準より]

高麗人参の根は、図のように主根、側根、細根に分類されます。主根が胴体で、側根が手足、細根が指と見れば確かに人の形をしています。人参と言われる所以です。

この図は、農林水産省の種苗登録の審査基準からの引用ですが、各部位の太さや長さも対象項目として審査した上で、新品種として登録されます。


高麗人参の紅参にはおデブで胴長・短足が好まれる

高麗人参

近年の高麗人参の卸市場では、主根の太いものが高値で取引されています。紅参向けには、150g以上のものが使用されます。中には、300gという大根のように成長したおデブさんもあり珍重されています。

しかし太いものは、炭水化物を多く含んでいるため、腐りやすいというリスクがあります。また、薬効の点でも少し疑問もあります。が、それ以上に人のカタチが精神的効能に繋がっているということかもしれません。

紅参に加工する前に、細根を除き、側根は少し残し切断されます。紅参の状態で理想的な形は、胴の長さが13~15cmで、足が2~3本ついており、できれば頭が3つほどあるものです。


高麗人参酒には自分の好みの形を選ぶ

人間の形をしたものは、そのまま焼酎に漬ければ、高麗人参の形を鑑賞することができます。最上部の写真は、男性と女性が戯れているようにも見えます。

想像力豊かな私にはそう見えます。これを焼酎に漬けて眺めながら高麗人参酒を楽しむ、何ともいいものです。

高麗人参の根の形状をコントロールする

人の形に似ている高麗人参ほど、有効成分が豊富であるわけではありません。しかし、人参の形状が商品価値を生むのであれば、人の形をした高麗人参を栽培したいと思うのは当然です。

そもそも根の役目は何でしょう?

植物の根の役目は、次の二つです。ひとつは、地上部の茎や葉を支えることです。強い風雨に遭っても倒れないように、しっかり踏ん張ることです。

もう一つは、水分と養分の吸収です。窒素、リン酸、カリの三大栄養素をはじめ、マグネシウムなどのミネラルを吸収し、葉に送ります。また高麗人参や根菜類の根には、養分を蓄える役目もあります。

水耕栽培では根の浸漬具合で根のカタチが変わる

高麗人参[水耕栽培の根/左:根の先端を浸漬、右:根の全体を浸漬]

水耕栽培では、葉や茎はスポンジ体で保持され、根は踏ん張りようのない水の中です。よって、根は地上部を支える必要はないので、ふんだんにある水分と養分を好きなだけ吸収することに専念します。そして葉が光合成で得た糖類などの養分を蓄えます。といっても高麗人参は陰性植物ですので、光合成には制限があります。

実際、根の全体を養液に浸けた場合、根のあらゆるところから側根や細根を伸ばします。1年目は小さな3枚の葉ですがしっかり光合成をしているようです。

一方、根の先端だけを養液に浸けた場合は、主根が成長しながら側根が数本伸びてきます。水面から上がったところからは側根も細根は生えてきません。高麗人参のミスト栽培を聞いたことがありますが、側根や細根は出ないのでしょうか?

主根、側根や細根の成長具合を観察しながら、養液への浸漬具合を変えることで根のカタチをある程度コントロールできそうです。
盆栽ではありませんが、根を芸術的に創作することも可能かもしれません。

土耕栽培では土壌の粒により形状が変わる

高麗人参[土耕栽培の根/左:土壌粒小、右:土壌粒大]

土壌の粒が細かい場合は、茎や葉などの地上部をしっかり支えるために、主根は地中深く伸びていきます。写真左は水稲育苗用土で栽培した1年根です。

一方、土壌の粒が大きく塊がある場合は、その塊を避けなければならず、2又3又に側根となって分かれていきます。写真右は赤玉土小粒で栽培した1年根です。
1年根でも立派な人の姿の物もありますが、偶然の産物です。

また、水分や養分が地面より深くにある場合は、それを吸収しようと根が深く伸びます。森などのように枯葉が栄養分になる場合は、地表近くに細根が伸びます。このように根の形状は生育環境の影響を大きく受けます。

高麗人参の用途によって好まれる根の形は違う

このように用途によって好まれる根の形状は違います。紅参用途にはおデブで胴長短足、高麗人参酒には人の姿をしたものが商品価値を高めます。

しかし、高麗人参の有効成分が皮に多く含まれるをことを考えると、側根や細根の多い全浸漬の水耕栽培で育てた高麗人参が向いているように思います。また、料理人からは細根の方がレパートリーが広げやすいという意見もあります。